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主に散文と短歌と短編/映画や本の話もします

夜が明けるのを待っている

 ブログを始めるなんて思ってもいなかった。嘘だ、文章を書けるならどんな媒体でもよかった。誰かを愛している記憶も、孤独を耐え抜く日々も、夜を待つ昼も、夜明けを待ってじっとベッドにいることも、全部忘れないように書き留めていたかった。

 

これを書いているのは眠れないからで、これを表に出すのは一人で抱えたくなかったから。海に流したボトルメールのようなこれを、誰かが読んでくれたらいいなと願っている。

ただ夜の明ける頃を待つのが少し息苦しくて、こうして何かを生み出そうとしている。一人じゃないって信じたいのかもしれない。

 

 インターネットに頼るのはあまりにも苦しい。こんなことなら早く死にたいなとか思う。夜明け前に眠れたらいいな。これを書いているのは日曜日から月曜日になった真夜中の2時過ぎで、TwitterにもInstagramにも誰ひとりいなくて、ふとした瞬間に思い出す過労死やホームレス殺人、ヘイトクライムとか、ミソジニーとか、好きな画家の作品に投げつけられた液体のこととか、そういうものに脳内が攪拌されて、自分のぬくもり以外で温まることができない夜を越えようとしている。

 音楽や文学、映画が好きなことが唯一の救いなのかもしれない。夜をひとりでなんとかして越える方法を知っている。J-POPから始まって、K-POP、HIP-HOP、クラシック、ROCK、どんな音楽も愛すようになった。ひとりぼっちのままで。読めない英語の本を買って、少しずつ読んだりする。

 安心して眠れたらどれだけいいだろうと思う。次の日、何もなかったらいいのに。たっぷりと眠って、夢の中で知らない誰かと朝日の出る直前の高速道路を、天国への道だと思い込んで、天井のない車で走りたかった。冷たい風が頬に刺さる感触も、カーステレオから流れてくる音楽が君とふたりだけが共有できた音楽だってことも、全部全部泣きそうになりながら夢見たかった。制限速度なんてない道を、夜明けを迎えに行くように走りたかった。一台だけの車が夜明けを探す世界で、孤独を忘れてしまいたかった。

 

 夢を見ることを恐れながら眠ることが、不安でたまらない朝を迎えなくていい日が来ないことが、起きてしまえば始まってしまう苦しみばかりを探してしまう日々が、どうしても怖い。朝起きれなかったらどうしようと、不安で仕方がない。こんなことを思わないで眠りにつけたらどれだけ幸福なんだろう。朝が来たら、大学に行って、課題をして、誰かに傷つけられないか、自分が誰かを傷つけないか不安になりながら過ごすのだろう。また夜が来て、おびえながら夜が終わるのを待って、また朝が来て、大学に行って、アルバイト先に行く。攻撃の標的になりませんように、誰かの嘲笑の対象にされませんようにと願いながらバイト先の扉を開ける。そういう日々が早く終わりますように。夜明けを待ちながら不安になるのはもう嫌だ。

 

ただ、夜が明けるのをひとりで待っている。

じっと、布団の中で、音楽を携えて、言葉をつづりながら。

 

 

2022-11-21 Monday 2:33